薬とは
大別すると化学合成医薬品と生薬(しょうやく)に分けられる。
化学合成医薬品とは
読んで字のとおり、化学的に混ぜ合わせて作られる薬で、
(例えば、熱を下げるアスピリン、殺菌消毒に使うオキシドール)
生薬とは
天然に産する動物、鉱物、植物のなかで、あまり手を加えないで蓄えておき、薬として用いるもの。
明治時代までは、生薬(きぐすり)と読まれていた。
“薬”という字は
病気は草によって楽になるという事から「草かんむり」に「楽」と書いて“薬”(くすり)と読まれている。
生薬の使い方には、民間薬と漢方薬があり、
民間薬とは
ゲンノショウコ、ドクダミのような薬草を生薬1種類で使い、使い方にもあまり難しい制限がないもので、
漢方薬とは
生薬を数種類、混ぜ合わせて使い、混ぜる種類、分量、服用の時期や方法も
制限されているもの。
いずれにしても、服用する時は、専門家の指導に従って服用する事をお勧めする。
民間薬(薬草)について
病気やけがには家庭で手当てができる程度と、手当てが難しい程度があり、民間薬(薬草)は、ごく軽い症状とか予防のために用いるもの。症状が悪化していくような時には、すぐに、専門の医師の治療を受ける事が大切。また、薬草には、作用の激しい成分を含んだものもあり、過飲、誤用には、充分、気をつけていただきたい。
民間薬の中で
よく使われる5つの薬草(1.現ノ証拠
2.ドクダミ 3.エビスグサ 4.ハトムギ 5.ヨモギ)を取り上げる。
ゲンノショウコ(現の証拠)
江戸時代初期頃から、日本で民間的によく用いられたもので、下痢などには、非常によく効くところから現の証拠と名付けられた。陽当たりのよい野原や道ばたでよく見かける植物。主成分はタンニンで、タンニンには、組織細胞をひきしめる収斂作用があり、下痢を止める。現の証拠に含まれているタンニンは、主にゲラニンから成っているため、タンニン酸より、著しく舌に感じる渋味が弱い。現の証拠が広く用いられている理由は、このへんにあるのかもしれない。その他に、フラボノイドとしてクエルセチンという成分も含まれている。この成分は緩やかに便通をよくしたり、尿の出をよくしたりする。それで、少し、多めに飲んでも便秘にはならない。しかし、適量が一番。
飲み方 は
一日量10gをコップ3杯の水で30分〜1時間、とろ火で煮つめ、かすを除
いて 食後3回に分けて温服する。
煎液の冷えたものは
ウルシ、草かぶれなどのかぶれ、湿疹、カミソリ負け、股ずれ、靴ずれなどの患部に冷温布すると効果がある。
ドクダミ(十薬)
梅雨時になると、多少湿り気の多い場所で白い花を咲かせ始め、どこにでもよく見かける植物。ドクダミの名前の由来も“毒矯み”毒を矯正するとか、毒や痛みに効くので“毒痛み”、のように、毒を抑制する意味からついたと考えられる。ドクダミの別名は「十薬」という。貝原益幹は『大和本草』の中で、「ドクダミと云い、十薬とも云う、はなはだ臭し、家園に植われば繁茂して後は、除きがたし…十種の薬の能ありとて十薬と号すと云う」と説明している。生の全草には、独特の魚のような生臭がある。この成分は、“デカノイル・アセトアルデヒド”と言って、強い抗菌作用をもっている。江戸時代の書『秘方録』には、「腫れものには、ドクダミをもみつづくべし。冬は葉なきにより、根を採りてつけてよし」と書かれている。ドクダミの生の全草を干すとメチル・ノニル・ケトンに変わる。そうなると、制菌作用は弱くなってしまう。茎葉には、クエルチトリンというフラボノイドが含まれている。フラボノイドというのは、植物中に含まれている黄色い色素をもつ成分で薬理作用として、利尿や便通をよくする作用がある。
生で使う場合 は
はれものやおでき、湿疹やかぶれなどに、茎葉をすりばちで
つぶすか 柔らかくもみつぶして患部につける。
飲み方は
ドクダミをよく水洗いをして、陰干しして、5日程度経ってまだ
乾ききっていないドクダミを1cm幅に切り、さらに2日間、天日に乾かす。
約10gに600ccの水を加え煎じ、1日3回、分けて飲む。
エビスグサ(決明子)
外国から渡ってきたという意味からエビスグサ(夷草)と名付けられた。アメリカ原産の1年草で、熱帯アジアから中国南部を通じて、今から約250年程前に渡来したと考えられている。現在“ハブ茶”と言われて市販されているものは、日本産のエビスグサの種子を使っているものと中国、台湾から輸入された、ハブソウの種子を使っているものと2種類ある。植物名の上では、少し混乱しているようだ。
別名、“決明子”とも呼ばれている。便秘で肩がこり首すじから頭にかけて重く、目がかすみがちの時に、それをお茶にして飲むと、便通がよくなり、目もはっきりすることから、明を決(ひら)く種子という意味で、決明子と名付けられたと言われている。主成分は、アンスラキノン誘導体で、ゆるやかに便通をよくする。
飲み方は
決明子をなべに入れ、ふたをして軽くこげる程度にあぶる。そして、これをどびんにいれて沸騰させ、そして飲む。味も飲みやすく、お茶代わりに、気楽に飲むことができる。
ハトムギ(ヨクイニン)
ハトムギの名は、明治時代頃から、ハトが好んで食べるムギという事からつけられた。成分としては、でんぷん、タンパク質を多く含み、アミノ酸、VB1も含まれている。コイクセノライドという成分も含まれており、これには、抗腫瘍性作用があると言われている。動物実験では、鎮痛、消炎作用も認められている。そして、昔から、肌荒れ、ふきでもの、おできにもいいと言われている。
飲み方は
ハブ茶と同じように、なべに入れ、ふたをして軽くこげる程度にあぶる。そして、これを土瓶にいれ、番茶のように軽く沸騰させて、
気軽にお茶代わりに飲む。
ヨモギ(艾葉)
別名、もちぐさといい、春になると、そこら一面に萌えるようにヨモギの若芽がふきだす。「よく萌えでる草」だから「善萌草(ヨモギ)」、モグサにして「よく燃える草」だから「ヨモギ」などと言われている。
ヨモギの葉を風通しのよいところで陰干しにしたものをガイヨウ(艾葉)と読んでいる。ヨモギの中には、収斂止血作用のある成分が含まれている。それで、昔は、畑や田んぼで仕事をしている時に、鎌などで軽い傷を負うと、手近にあるヨモギの葉を数枚摘み取り、口中でかみくだいて、患部につけて止血したものである。
葉には
ビタミン、ミネラル、タンニン、葉緑素、アミラーゼが含まれている。ミネラルの中でも、カリウムが多く含まれており、利尿作用などを促してくれる。また、タンニンも多く含まれており、消炎、収斂作用も促してくれる。
薬玉は
昔から冠婚葬祭のとき、「薬玉」(くすだま)を贈る風習があった。今でも開店のときなどにお祝いとして贈られたりしている。当時の薬玉はヨモギに五色の絹糸を結びつけたものだといわれている。その後、ヨモギの他に木香、沈香、丁字、甘松、竜脳など芳香のよい生薬を錦の袋に入れ、これに、ヨモギ、ショウブ、造花などを飾りつけたと言われている。「“薬玉”を佩いて、飲酒する人は、命長く、福ありとなきこしめす。」と昔は、良い香りのするところには、陽気で、悪い病気など起こらないという考えがあってヨモギが薬玉に用いられていたようだ。
漢方処方では
キュウキキョウガイ湯(センキュウ、甘草、艾葉、当帰、芍薬、地黄、阿膠)、キョウガイ湯などに配合されている。
飲み方は
5〜10gを約600ccの水で半量になるまで煮つめ,かすを除いて1日3回食間に分服する。
浴剤として
浴剤としてもよく使われれており、特に、痔の人には、収斂止血作用があり、又、精油成分が血行を良くしてくれ、効果が期待される。
お灸
お灸に使用するモグサはヨモギから作られる。乾燥した葉を細かく砕いて、
粉末になった部分を取り除くと、葉の裏の綿毛だけが残る。その子の綿毛を集めたものがモグサである。